■エキスパンションジョイント(Exp.J.)とは
エキスパンションジョイント(Expansion Joint)は、日本語で「伸縮継ぎ手」という意味。文字通り、伸び縮みする継ぎ手のことです。最も多く使用されているのは、アルミやステンレスによる金属製ですが、最近ではボード材を内蔵できるものや、樹脂素材を用いてデザイン性や可動性を重視したタイプなど、選択肢は広がっています。
規模が大きかったり、変形プランだったりする建物は、隙間を挟んで複数の躯体に分けて設計するのが一般的です。躯体を分割することで、地震などの外力の働きで建物が受けるダメージを最小限に抑えることができるからです。
この隙間を「クリアランス」と呼び、さらにその隙間をつなぐのがエキスパンションジョイントです。
■エキスパンションジョイント(Exp.J.)の特徴
Exp.J.は、分かれて建つ構造躯体に、それぞれ異なる動きが発生しても、それに追従し、吸収する働きがあります。躯体の動きには、地震時の変形や、温度変化による伸縮、強風時の動きなどが挙げられます。
構造特性の異なる躯体をつなぐ
クリアランスを介して建てられる複数の構造躯体を、一体的に利用できる建築空間としてつなぐことも可能!
例えば、階数が極端に違う2棟の一体化、鉄筋コンクリート(RC造)と鉄骨(S)造の躯体の一体化、異なる基礎や杭に載せた躯体の一体化などです。
複雑な平面形や長大な建物でも
複雑な平面形や、平面が長大な建物のケースにも対応できます。複雑な平面形の典型例は「L字形」です。地震時の揺れが複雑になるので、整形な躯体に分けてシンプルな構造とし、それぞれの隙間をExp.J.でつなぐケースがよく見られます。
また、平面が長大な建物は、不均質な地盤や、熱による伸縮を大きく受けやすいので、適切な箇所で躯体を分けるのが一般的な設計方法です。
急増する免震建築でも
免震建築の場合、地震の揺れを減衰する免震構造の部分と、地盤面や非免震部分とが取り合うためExp.J.が欠かせません。他の建物と異なり動きが大きくなることから専用のExp.J.を用います。
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■エキスパンションジョイント(Exp.J.)のつなぎ方
隙間の外側を切れ目なく
基本的には、クリアランスの「屋外側」と「屋内側」の双方にExp.J.を取り付けるという点です。
屋外側のExp.J.は、躯体のつなぎ目となるクリアランスを、建物の外側からぐるりと、切り目なく巡らすものです。このExp.J.は、外壁や屋根、屋上などと同じように、雨風や火災などから建物を守る機能も求められます。
屋内のExp.J.は空間ごとに
クリアランスのある位置が、内部空間をつなぐ場合などは、屋外側とは別に、屋内側にもExp.J.が必要になります。
例えば、クリアランスをまたぐ形で内部廊下が通っていたり、部屋があったりする場合は、クリアランスに沿って屋内側からExp.J.を取り付けます。